-1月-2013の記事
世界の英語を歩く
英語は、世界193か国うち50カ国で公用語、20カ国で通用語とされています。世界の諸英語(World Englishes)と付き合ってきた著者が、新しい英語との付き合い方を提案している本です。
日本の英語教育では、アメリカ英語やイギリス英語を基本として学んできますが、この本を読むと、日本人の英語は、「日本人英語」と呼んでもいいのではないかと考えるようになります。
この本を読んで印象的な点をいくつか抜粋してみます。カギ括弧(「」)の部分が引用部分です。
インドの英語の説明の部分:
「インド人がインド人ふうの英語を使う事は、自分は英語を話してもイギリス人ではなく、インド人であるというアイデンティティの表現でもあるのです」。
筆者がインド人との会話の中で質問された事:「日本人なのにどうしてアメリカ人のような話し方をするのですか、と言われました。これには本当に考えこんでしまいました」。
シンガポールの英語の説明の部分:
「ケーキ屋さんで店員に”Can I keep it in the refrigerator until tomorrow?”と聞くと聞くと、”Can”と返事がありました。そうです。シングリッシュ(シンガポール英語)ではcanとかcannotは独立して使うのです。バックで駐車をするときに、相方は、”Can,can,can”と言って誘導します」
フィリピン英語の説明の部分:
「フィリピン英語では、pass the house は、”その家を素通りする”ではなく、”その家に寄っていく”の意味になります。”バスを降りる”はget off the bus よりも、go down from the bus を使います。based on (~を根拠にして)は、based from になったり、result in (~という結果になる)は、result to になったりもします」
オーストラリア英語の説明の部分:
「オーストラリア人はごくを縮めて短くするのが大好きです。彼らが、”Ta.”と言えば、”Thank you.”の意味です。”Ta-ta.”と言えば、”Goodbye”のことです。”Dins will be ready in a min.”(The dinner will be ready in a minute.)と言う人もいますし、ディナーの事をdin-dinという人もいます。すべておとなの話です」
その他、アメリカ英語、イギリス英語、カナダ英語、ニュージーランド英語、アジア各国の英語が紹介されています。
「日本人は一般に日本社会のなかで英語を学習するので、ネイティブのように話すという英語教育の目標は非常に無理があり、有効でも適切でもありません」
この本を読むと、英語は事実上の世界共通語であると同時に、「多様な言語」であることが理解できるようになります。
そして、ネイティブのように話したいという願望があってもなかなかそこに到達できないのが日本人が多くいるのですが、その目標自体も少し考え直した方がいいのではないかと思います。
興味のある方は、是非世界の英語を歩く (集英社新書)を読んでみてください。